From:藤村綾
どうも、藤村綾です。
不倫は会いたくても会えないから燃えあがるのもあるが、リスクを背負ってまでもカラダの関係を続ける理由はセックスが合うというのが本当の理由かもしれない。
それは地獄だ。
地獄に落ちていくうちにわたしは『あなた』にひとり占めされたいと願うようになる…
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会いたいときに会えない辛さ
「ねぇ、」
「ん?」
あなたは腰にバスタオルを巻いて髪の毛をワシャワシャとしながら、わたしの寝ているベッドに座った。
「なに?」
久しぶりにあなたに会った。
多分計算をすると半月だ。
以前は長く会わなくても10日が最大だった。
こんなにたくさんの日に会わなかったのは忙しかったということも分かってはいるが、それでも2回程メールを打ってしまった。
『今日はうちにいます』とか『どうなの?』とか。
会いたいとは決して打ってはいない。
すでにうざい女に成り上がっているのだから。
会えるという奇跡はコンビニでクジを引いて当たる確率に付随している気がする。
『会いたいよ』素直にメールあるいは電話を出来る相手ならばいい。
そうゆう相手なら。
けれどあなたは違う。
あなたは決してわたしの手に届かないところにいる人だから。
あなたが布団をまくってわたしの横に滑り込む。
シャワーをしてきたけれど一向にソープの匂いはしない。
あなた特有の匂いがする。
ソープも使っていないのになぜいい匂いがするのだろう。
「どうしてね、男と女はね、カラダの関係を続けるのかな」
表は雨がおそろしいほど降っている。
静寂な部屋に雨の音がザーザーとラジオのノイズのよう鳴り響いている。
「わからない」
あなたはわたしを背後から抱きしめつぶやき
「カラダの関係を続ける理由を深く考えることはない。いまさらだよ。だって…」
だって?わたしは先を促す。
けれど、あなたはその先の言葉を続けなかった。
○○なカラダが大好き
温かいカラダ。
柔らかい髪の毛。
細い脚。
けれどしっかりとした胸。
わたしはあなたの上に乗ってカラダを重ね、唇も重ねた。
舌と舌を絡ませる。
あなたの唇はいやになるほど柔らかい。
優しい舌の感触にすでにめまいを覚えた。
カラダだけの関係と割り切ってあっている。
なので無理もいえないし、むやみにカラダを重ねるだけのそれだけの関係。
あなたに嫌われたくなくてまったく平然を保っているけれど、本当は苦しくて切なくてそれでいて絶望的で消えたくなる。
カラダだけは素直に濡れ、あなたの欲を受け入れてしまう。
わたしは愛を勘違いしている。
あなたとわたしの間には【愛】などとゆう耽美な文字などはどこを探してもない。
強いていえばあるのは【虚】だろう。
虚構の世界にいるわたしとあなた。
あなたはそれでもわたしを抱く。
もっとも感じる抱き方をしわたしを奈落の底に突き落とし、また落ち込ませる。
あなたに会ったときは幸せだけど、会えない時間は辛い。
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「優しくしないで」と思う理由
あなたは、イク、とだけ短くいいながら果てた。
わたしはきちがいのような声をあげていた。
どうして声が出るのだろう。
どうしてしたあとこんなに虚しくなるのだろう。
どうしてカラダの関係を続けるのだろう。
好きとか愛しているの代用の言葉はどれだろう。
肩で息をしているあなたの方に目を向けながらぼんやりと考える。
優しくしないで。
優しい目をしないで。
声が手が全てが愛おしいのに。
その手でわたしを戒めて。
わたしは罪深い女だから。
あなたはなにも悪くはない。
わたしだけが消えればいいだけ。
たわいもない会話の中で生まれる愛
「雨、」
ベッドの天井に向かってあなたは声を出す。
「雨」
わたしも同じことをくりかえし
「明日はやむかしら」
あなたにか、自分にいったのか定かではないけれどつぶやく。
「わからないな」
「よく、わからないね」
あなたの声が雨の音に飲み込まれていく。
分らないのはカラダの関係を続けている状況だ。
こんなに好きでどうしようもない感情をどうして抱えてしまっているのだろう。
「なにか、最近おもしろいことあった?」
話題が途切れるといつも訊いている。
あなたは少しだけ眉間にシワを寄せながら、んー、どうだったかなぁ、と、考える。
真剣に。
「あ、あった、あった」
声のトーンを上げつつ、話しはじめた。
「コンビニでタバコを買ってね、車に持っていって、ゴミを捨てようと袋に入れて捨てにいったんだよね」
「うん」
相槌を打つ。
「で、タバコを吸おうとして見たらタバコがどこにもないわけ」
そこまで一気に話し、タバコに火をつけてスーッとタバコを吸う。
「もしかして?」
わたしは、もう笑う準備に取り掛かっていた。
「そう。そのゴミ袋に買ったのを入れて捨てたのでした。まる」
あなたは、まる。と自分でいってから締めくくった。
わたしは大きな声でゲラゲラと笑った。
「それ、まるでコントだよね。」
そう付け足して。
「それ、取りに行かなかったの?」
再度訊いてみると、あなたは首を横にふった。
「もう、めんどくさいから。買った。また。まる」
わたしは再三と笑った。
「おもしろいね。なんてせっかちなの。あなたは。」
「俺もさ、そう思うんだよね。」
自販機でお金を入れコーヒーのボタンを押してもコーヒーを持ってくるのを忘れてくるしなぁ。と、いたずらに笑いまたせっかちを暴露する。
「ウケる」
わたしはお腹を抱えつつ笑った。
お別れの時間
「行くか」
あなたは時計を確認する。
わたしもスマホを手にとって時間を確認すると19時40分だった。
「うん」
まるで心療内科の診察だとふと思った。
待つ時間は無駄にながいけれど、診察は2分で終わる。
会ってからまだ2時間も経ってはいない。
会わない時間は半月もあったのに。
「ねぇ」
洋服に着替えたあなたに裸で抱きつく。
あなたは観念したようわたしを抱きしめる。
「ねぇ」
「ん?」
雨の音がもう聞こえない。
やんだのだろうか。
帰りたくないのとわがままを口にして雨の音のようザーザーと泣いたらあなたはきっと眉根をひそめわたしを突きはなすだろうか。
泣くもんか。
もうあなたの前では涙を見せないと決めている。
「早く着替えな。行くから」
わたしは観念したように顎をひいてうなずいた。
表に出たらすっかり雨はやんでいた。
そのかわり雲の隙間から橙色の明かりが灯されている。
わ、綺麗、わたしはほとんど無意識に声に出していた。
帰りの車内が嫌いだ。
わたしはずっと窓の外を見ていた。
あなたは決してわたしに話しかけなかった。
たくさんの車が流れていく。
同じように雨粒を乗せて。
前方にちょうど西日があたりわたしとあなたの顔に覆いかぶさる。
あ、あなたは小さく声をあげた。
声が、声はどうしても耳から離れない。
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