こんにちは。白玉あずきです。結婚を視野に入れた人生を考えているけれど、さて、どうしたものだかと、もやもやしている働くアラサーのみなさんに、「本当にこの人と結婚していいのか」をジャッジするヒントにしてほしい「その男と結婚しちゃダメ!」図鑑。第11回は「初動だけ男」です。
根拠のない自信をホンモノに見せるマジック
彼の名前は運賀良男(34歳)。もちろんこれは仮名ですが、実際の名前を加工してみました。
本名もこの仮名と同様、「俺、名前のおかげか、運がいいんだよね~」と前のめりで言えちゃう4文字で、飲み会のつかみはいつもコレ、という男性です。
「女の幸せってなんだろう…」「私の人生、これからどうなっちゃうんだろう…」などと、漠然とした不安を抱え、幸運を求めてパワーストーンブレスレットをお守りにしちゃっているような働くアラサーにとって、「運のいい男」というのは、とても魅力的です。
そして、次に続くのが「3か月間、東南アジアにひとり旅した話」です。
「現地で財布を盗まれたけど、それがきっかけでドバイの大金持ちと出会って新しビジネスの話で盛り上がった。で、彼からロレックスをもらった。それがコレ」と、ギラギラ輝くゴールドの時計(ダイヤ入り)をスーツの裾からチラリと見せたリ、「屋台のおばちゃんの手伝いをしているときに、たまたま仲良くなったおじいさんが現地のホテル王だったんだよね。それが縁で、新しくつくるホテルを1棟俺に任せたいという話になってさ」という話をしてみたり。彼の「運のいい」話は、スケールがやたらと大きい。冷静に考えれば、胡散臭いのです。
でも、現地で財布を盗まれた、屋台のおばちゃんと仲良くなったという、「東南アジアのバックパッカーあるある」話にリアリティを感じて、後半も本当なんじゃないかと思わせるのが運賀良夫(仮名)のテクニック。いや、本当かもしれませんけど。
でもね、今現在、ドバイ関連のビジネスをしているわけでも、バリのホテルのプロデュースをしているわけでもないんです。
まぁ、本人も「バックパッカー時代に、現地でそういう話になったことがある」って言ってるだけなんですけどね。だけど、初見の女性に「この人ってラッキーな星の元にいそう。一緒にいるといいことありそう」と思わせるには十分です。
また、運賀(仮名)さんの経歴もそこそこ魅力的です。
彼は、関西の大学を卒業したあと、東京にあるIT企業に就職、1年勤めて退職したあと、知人とWEBサービスの会社を立ち上げています。今でも彼の名前をネット検索にかけると、オレ様ポーズでインタビューを受けている記事が見られます。
そんなところも、「1日も早くSNSで注目される人になりたい」と1日1ポストを目標にインスタグラム更新にいそしんでいる自己顕示欲の強い女性には「自分にとって強いカードになりそう」な点で魅力だし、実際に運賀氏と付き合ったA子さんに聞いてみたところ、「なにより、ネットに情報がなにひとつ出てこない無名な人よりも、信頼できると思った」そう。ネット社会の弊害ですかね。
な~んて、そこはかとなく運賀良男(仮名)氏をディスっていますが、なにを隠そう、この運賀さん(仮名)、とんでもない「初動だけ男」だったのです。
初動だけ男は全力でスタートダッシュをかける
さて。知り合いの紹介で運賀さん(仮名)と出会い、その日に彼を好きになってしまったA子さん。「すんごく話が盛り上がって、朝4時までやっている飲み屋で閉店まで。後半はお互い水しか飲んでなかったんですよ。酔っぱらいながらじゃなくて、ちゃんと話がしたくて、聞きたくて。それぐらい、気が合った、と思ったんです」。初動だけ男のスタートダッシュは全力です。
「1回目のデートの途中。“彼が、今から1本仕事の電話をかけなくちゃいけない。駅のロッカーに荷物を預けてるから、悪いけど、それ持ってきてくれない?”って鍵を渡されたんです。え、なんだそれ? とは思ったんですが、言われた通りの場所に行って、ロッカーを開けたんですよね。そしたら中に、大きなバラの花束と、小さなギフトボックスが。取り出して、彼のもとへ戻る途中、道行く人からチラチラと注目されて。優越感でした。
彼に、すごく恥ずかしかったんだけど、これなんなの? って聞いたら、“運命の人と出会えた喜びをあなたにどうしても伝えたくて”って。今、振り返れば、何言ってるんだ、こいつ、ですが、そのときはめちゃめちゃ感激して、泣いちゃったんですよね、私(笑)。私も彼のことを、運命の人だと思いました」
繰り返しになりますが、「女の幸せってなんだろう…」「私の人生、これからどうなっちゃうんだろう…」などと、漠然とした不安を抱え、幸運を求めてパワーストーンブレスレットをお守りにしちゃっているような働くアラサーは、こういうことをスルッと言えちゃう男にコロリときちゃうんです。
そしてふたりはめでたく付き合うことになりました。
しかし、その恋はあっという間に終わります。
「とにかく、彼、不潔なんです。1週間くらいお風呂に入らなくても平気だし、歯も磨かない。仕事が忙しいせいもあったんですが、3日くらい会社に寝泊まりして、そのまま私の部屋にきて、スーツのままでベッドに入っちゃう。せめて服を脱いでって頼んでも、“う~ン、ごめんねぇ”って言うだけで、そのまま寝ちゃう。もう、すごくそれがイヤで」・
3か月のバックパッカー経験で、なんとかなる精神を磨き上げた彼は、怠け者でした。
「お風呂に入らないから、お尻とかボツボツできてて、それもなんだかもう…(笑)。“お風呂に入らなくても死にやしないよ”っていうのが彼の口癖で。確かに死なないですけど、嫌なものはイヤ。それで私がムッとしていると、“3か月間、東南アジアにひとり旅した話”を持ち出してくる。現地の人たちは、お風呂なんて入らなくても、幸せに暮らせてるって。知らねーよ、って感じです。彼の家に行ったこともあるんですが、キッチンはゴミの山で今にも虫が湧きそうな汚さ。クラクラきました。
確かに、行きあたりばったりの旅を楽しめる行動力や、“生きてる限り、なんとかなる”っていう彼の精神は尊敬します。最初は、そこがいいと思ったんですけどね…。でも、ちょっと一緒にいただけで、彼のライフスタイルに巻き込まれるのは嫌だなぁって思っちゃいました。自分のことを運がいいと信じていて、それを人に堂々と言えるっていうだけで、本当に運がいいのかなって疑問も芽生えてきて。つまるところ、ただの不潔な口だけ男?
やっぱり私は、バッグパッカーよりも、非現実な優雅さを味わえる旅が好きっていう人のほうが合うみたいです。っていうか、そういう人がいい」。
自分に足りないものを補ってくれそうな相手を好きになるというのは、自然なことです。だから、初見で「あ、僕、それ持っていますよ」感をガンガン押し出されると、惹かれてしまう気持ちはわかる。
でも、「初動だけ男」はあっという間に電池切れになってしまいます。しかも、その電池は充電式じゃないので、使い切ったら終わりです。
A子さんはさっさと見切りをつけましたが、「出会った頃の彼が忘れられない。そのときの彼が本当の彼で、今の彼は仮の姿。いつかきっと、もとの彼に戻ってくれる」と信じてずるずると付き合っている人もいます。
残念ながら、「その“いつか”は一生訪れない」説が有力です。なぜなら、それが彼のキャパだから。
written byポップコーン株式会社